第2回 蘇るペッタンポン

夏の思い出 ペッタンポン

骨董品データ

名称 ペッタンポン
発行 京王帝都電鉄
発売 1986年
コメント 京王線65駅(当時)をスタンプを押しながら旅をする企画に使用するスタンプ帳

かつては天才だった私

男の子なら誰しも一度は「電車」とか「スポーツカー」などの乗り物に一度は憧れた事があるはずです。そして筆者も例に漏れずその一人でした。
特に電車が大好きでした。
幼稚園の頃に鉄道の写真と名前を100以上記憶し、親を「この子は天才だ!」と喜ばせた記憶があります。
今思えば親バカもいい所ですが、天才だと言わしめた本人(私)は今や、覚えたことは全て左から右へ抜けてゆく体たらく。あの天才と言わしめた記憶力はいったいどこに…。

その電車好きの子供が、親の仕事の都合で東京に引っ越してきたの小学校4年生の時でした。
「小さい子には旅をさせよ」という諺がありますが、私の親はおとなしかった小学生の私に一人旅をさせて、困難に立ち向かう力をつけて欲しかったようです。
そんな親の願いに電車好きの私が賛成したのは言うまでもありません。
かくして、昭和61年7月23日。
私は京王65駅全駅制覇という目標に向かって一人旅に出たのでした。

京王65駅スタンプ停車の旅-その名はペッタンポン

ペッタンポンとは京王帝都電鉄が企画したスタンプラリーの名称のこと。
京王線全65駅に備え付けられているスタンプをスタンプ帳に押します。押したスタンプを駅員さんに見せると、記念に駅名シールをくれます。 家に帰って台紙にもらったシールを貼ります。全駅のシールが揃うと全駅制覇記念に豪華記念品をくれるというものです。

当時を偲ばせる沿線図

スタンプラリーでは京王線・京王新線・相模原線・競馬場線・動物園線・高尾線・井の頭線を乗り継ぎ、65駅全駅制覇を目指します。
当時を偲ばせる沿線図を見てみると……。

ペッタンポン
fig 2.1 建設中
ペッタンポン
fig 2.2 開業予定

今では当たり前のように利用している路線も、当時は建設中や開業準備中だったりするところが時代を感じさせます。

スタンプラリーの旅に出発

府中市に住んでいた私は最寄の分倍河原駅で最初のスタンプを押し、いよいよスタンプラリーの旅への第1歩を踏み出しました。

ペッタンポン 分倍河原駅
fig 2.3 はじめの一歩

ペッタンポンは見開き左ページにスタンプ欄、右ページに駅名の由来、周辺にある史跡の紹介など各駅の解説になっています。
ただ闇雲に電車に乗ってスタンプを押すだけでなく周辺地域の勉強も兼ねている非常に有意義な企画でした(当時は気づきませんでしたが)。
最初に押したスタンプなので緊張のせいか、スタンプがメタメタです。今ならもっと上手に押せる自信があるのですが…惜しいことをしました。
この記念すべき初日(7月23日)は元気がありすぎたためか快調に進み、ペッタンポンの記録を見ると、分倍河原駅→中河原駅→・・・→京王八王子駅→・・・高尾山口駅→府中駅→・・・→調布駅と1日で22駅制覇という驚異的な成果を残しています。
このペースでいけば3日で65駅制覇も夢ではありません。
(結局、初日に帰宅してから熱を出して寝込んでしまい、夢で終わったのですが)

可愛い子には旅をさせるべき

この夏休み1ヶ月の思い出は10年以上も昔の話ですが、スタンプの旅をしながらそこで出会った人々、数々の困難と思い出。そのどれもが昨日のことのように思い出せます。
世情不安な最近では、小学生の一人旅など危険かもしれません。それだからこそ、こういうペッタンポンのような行動範囲が限られ、駅員の目が届きやすい企画はうってつけなのではないでしょうか。
親たちも自分の子供が可愛いと思うならなおさら、旅をさせて子供に自信をつけさせるべきだと思います。この旅が自分の人生にとってプラスにはたらいたことは私自身間違いないと思っていますから。

結局私は65駅完全制覇できたのでしょうか?
それはまた別の機会に話すことにしましょう。