長らくお待たせしました。>Y地先生
旅の記録を書き留めることで、初めて旅は完結するのです。
友人Y地氏による私のためだけに企画してくれた「新しいアキハバラツアー」完結編。
旅の行程としては、正味半日だったのですが……ダラダラ書き続けること4記事目。
筆者感激のお返し(大したものではありませんが)と思ってご容赦下さい。
真の目的
長かった(1日も経ってないけど)ツアーもここが終着駅。
どうやら旅もここで解散の模様。せっかく上がってきたテンションも北千住で降ろされた一挙に萎んだ。
なんでこんな中途半端なところで……。きっとY地氏に自宅に帰るのにはこの駅が都合が良い(※1)からだろう。そう思うことにした。
(※1)この駅が都合が良い……自分はどの駅でもそんなに距離に大きな違いがあるわけではない。遠すぎるので。
北千住の駅を目的もなく歩く。 地下鉄の改札前に着いたときだった。
「本日は私のツアーにご参加頂きまして、誠にありがとうございました」
かしこまった口調でY地氏がおもむろに切り出した。
「はぁ……まぁ……」
一晩中語り合うことなんて、大学以来滅多になかったことだったので楽しかったです(同時にオールをする体力がないことも悟りました)
「今日はオールで語り合おうぜ!」という気分になっても、周囲が「じゃ、明日があるんで」と帰ってしまったり、逆に「終電大丈夫?」と心配してくれたりすると、
ああ、まぁ、今日は帰りますか……などと不完全燃焼に終わったりします。これが社会人ということなのでしょうか。少し寂しいですが。
もっとも寂しさをおぼえるのは、自分が濃密な人間関係に餓えているということの裏返しなのかもしれません。
それはともかくY地氏の挨拶は続く。
「なぜ、こんな北千住駅でと思われるかもしれません。実は私からささやかながらプレゼントがあります」
プレゼントはすでに頂きましたが。まだ他にも?
彼は、ロマンスカー(MSE)の特急券と小田原までの乗車券を手渡した。
おおおおおおおおおおっ。
実は以前酒の席で、ロマンスカーVSEに自分だけ乗ったことがない(※2)という話になり、たいそう羨ましがったことがあったのだ。
(※2)自分だけ乗ったことがない……そっちの趣味のメンバーではありません。
何が嬉しかったって。 これからロマンスカーに乗れることではなく、言った本人ですら忘れていた何気ない一言を覚えてくれていたことが何よりも嬉しかった。
心から感激しました。
こういうときはどう表現すれば伝わるのか、どう感謝すればいいのか、自分のボキャブラリの貧しさに困ります。
Y地氏はすべてこのロマンスカーの時間に間に合うように計画を立て行動していたのだ。
そしてこの最終目的で驚かせようと、私にひた隠しにしていたのだった。
そういう意味で彼の計画は完璧だった。ただ一つだけニアミスをしていた。
昨晩KICHIRIで飲んだときに、不用意にも一瞬。ほんの一瞬だけだけど、彼のカードケースに挟んであったこのチケットが見えた。
目ざとい私が見逃すはずはなかった。
「あれ?ロマンスカーの切符じゃん、どこか行くの?」
いつもは全ての質問に快活に答えてくれる彼が、このときだけは「ええっ……と、まぁ…○▼※π@%&」しどろもどろの答え。
その時は触れて欲しくない話題もある(女関係だと思っていた)んだなと思って、それっきり話題には触れないようにしていた。
……まさかそのチケットが自分のためだったとは。
ロマンスカーMSEの旅
ところで私の降車駅にはロマンスカーは止まらないのですが。
「ですので小田原駅まで買いました。申し訳ありませんが、小田原駅から降車駅までは自腹でお願いします」
……あ、そういうことね。
やがて時間になり地下鉄構内にロマンスカーが到着。
まだデビューしてまもなくということもあり注目度は満点。駅ホームに小田急の女性スタッフを配置してロマンスカーのアピールに尽力。
電車が到着すると、カメラ小僧たちがパシパシ写真を撮っていました。
旅の案内人Y地氏に別れを告げ、ロマンスカーMSEは滑るように北千住駅を発車。
地下鉄構内をロマンスカーが走るという構図はなんとも不思議な感じがします。
私は車内でY地氏から渡された紙を広げながら思い悩んでいた。
実は乗車券とともに彼から密命を言い渡されていたのだ。
「ただロマンスカーに乗せるだけじゃつまらない。この車内限定グッズを買ってきて」
紙はどこかのサイトを印刷したもので、「MSE携帯ストラップ(600円)」と「MSE手拭い(500円)」の写真に赤丸がついていた。
ぐっ……。また難易度の高いミッションを。
車内販売のお姉さんにMSEグッズを下さいと言えと。テツでもない私に!しかもMSE手拭いは"ロマンスカーメニュー(※3)に掲載されていない"と書いてあるではないか。
要するに"そっちの人は知っている"ということだ。
(※3)ロマンスカーメニュー……各座席に置いてある車内販売用のメニューのこと。
携帯ストラップならロマンスカーメニューにある品物なので、気付いたフリして「これをくれたまえ」と言えば済む話(それでも恥ずかしいけど)。
しかし手拭いとなると難しい。"それを目的に乗ってきたそっちの人"と相手に教えているようではないか。
だがせっかくのプレゼント。無駄にはすまい。
車内販売のおばちゃんお姉さんがワゴン引いてきたので、勇気を出して呼び止めた。そして紙を指さし
「……MSE手拭いというのがあると聞いたのですが」
「ああ、それね。キャンペーン終わっちゃったのよ」
恥かいた。
敗北感に打ちひしがれながら、MSE携帯ストラップを2つ購入。1つはY地氏に。もう一つは……そのときに一緒にいたメンバーの誰かで良いだろう。
こうしてミッションは終了した。
旅に疲れ切っていたらしく地下鉄構内を抜けたところで気を失った(風景自体は見慣れているので、どうでもいい)。
そして降車駅が無情にも通り過ぎるところを恨みがましい目で見ながら、小田原駅に到着。
せっかくMSEに乗ったのだから、なんとかして写真に収めようと思ったのだが、ホームでは家族連れやらジジババどもが占拠していて思うように撮影できぬ。
そこのクソガキ。長い人生また乗る機会なんていくらでもあるだろうから、今回は遠慮しやがれ!
ジジババは冥土が近いんだから写真なんて無意味だろ(←暴言)、遠慮しやがれ。
小田原駅に到着した瞬間にY地氏から、いつものメンバー宛てにメールが届いた。
件名:祝!初乗車
VSEに乗った事が無かった担当@navi研さんが、皆に先駆けMSEに初乗車!
「どや?」顔の彼は勝ち組の風格~Y地氏からのメール
……どこまで緻密なんだか。
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