就業後。会社の先輩が今週号の「マガジン」を片手に妙に慌てていた。
「どうしたんですか?」
「いや……これだよ」
先輩が指した所をみると某マンガ(タイトル失念)の1コマに「x^2+2x-15=0」を解くにはどうしたらいいんですか!」というワンシーンがあった。
「ええ……これがどうかしたんですか?」
「どうやって解くのか思い出せないんだよ」
……なるほど。
それから先輩は裏紙にαだのβだの「どうやってやるんだっけな……」とブツブツ呟きながら式を書き始める。書いてはグシャグシャと線で消し、また書いてはグシャグシャ消す。A4の裏紙いっぱいにゴチャゴチャ書いたものの一向に解決できず。 「やばい……これは中学生向けの数学ドリルを買ったほうがいいかも……」そのうち後輩やら課長まで集まりだして「えっ?こんなの簡単じゃん。見た瞬間、答えわかるじゃん」とやいのやいのと言い出した。
みんながいつまで経っても解けない先輩に横からあーだ、こーだとヒントを出しなんとか解決。 因数分解を覚えているかどうかは、大学時代にアルバイトで塾の講師をやっていたかどうかで別れるという結論に達した。その先輩は高校卒業以来、因数分解に接する機会はなかったし、「見た瞬間答えがわかる」と豪語した課長と後輩は、入社する前に塾でアルバイトをしていたからだ。
「それじゃぁ、2次方程式の解の公式は?」
塾講師経験の後輩「そりゃぁ、解の公式ぐらい……えーっと……。あれ?」
これがもう全く駄目。分母はaだっけ、それとも2aだっけ。とか、分子のルートって全体にかかるんじゃなかったでしたっけ?これまた記憶があやふや。 (因数分解ができなかった先輩は当然覚えていない)
そういうお前はどうなんだ。と皆さんはお思いかもしれませんが、こう見えても教員を目指している身。例え専門分野が異なろうとも、中学校で学ぶ範囲ぐらい………………あれ?
もう記憶あやふや
「たぶんこれだろう」という公式は頭に思い浮かぶものの、今一つ答えに自信がない。おお、確か解の公式って導き出せるよな。ax^2+bx+c=0として……えーっと……。おかしいな。 つい昨日(←誇張)まで覚えていたはずなのに、なぜ出てこない。ばかな。 先輩同様、裏紙をいっぱいに使って解の公式を導き出そうとするが、やればやるほどドツボにはまる。
近くに入社2年目の弊社初の大学院卒である修士様がいるではないか。しかも大学では数学科を専攻。これ以上の人材はいないだろう。
さっそく彼に聞いてみると、さすがは修士様。即答で返ってきた。
「解の公式なんて大学で使わないので……まったく覚えていません」
……だめじゃん。
人間の記憶とは恐ろしいもの。大学を卒業して早数年。かつては常識のように覚えていた知識も使わないと、これ程までに忘れるものなのか。「これはいくらなんでも酷すぎる……」と先輩と後輩と3人で落ち込んでいたところに、今年の新入社員が口を開いた。
「大丈夫です。大学のとき試験で出ましたけど、学生の半分が答えられませんでしたから」
聞くところによると新入社員が大学生のとき(ほんの2、3年前)、物理数学の授業であまりのできの悪さに業を煮やした教授が「お前ら、これはサービス問題だ!」と言って試験で解の公式を導き出す問題を出したらしい。結果は先に書いた通り。
……日本オワタ\(^o^)/
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