決戦は土曜日

2007-08-18 (土)
- 或る日常の風景/学級日誌

1次試験の合格発表からわずか10日あまり。再びこの日がやってきました。

東京都教員採用試験2次選考

この約10日間はプレッシャーと時間との戦いでした。
過去の記録を振り返ってみても"今日(金曜日)仕事を依頼されて「できれば今日中、遅くとも月曜日」って言われたのだが"(昨年)とあるように、 毎年なぜかこの時期に納期が迫っていたり急激に忙しくなったりするのは何かの法則でもあるのでしょうか。

転職した今年も例の法則が発動。17日期限の仕事を終わらせるべく死にもの狂いでした。ただ転職した今年からは自分の気持ちの中で 「仕事とプライベート(=採用試験)は別。試験だからと言って仕事の手は抜かない」 という決意(※1)があったので、例年になくプレッシャーでした。

(※1)という決意……去年までは手を抜いていたんかい!とお叱りを受けそうですが、確かに優先順位が、試験 >>>(越えられない壁)>>> 仕事となっていたのは事実。

結局、面接票を書き上げたのが一昨日の深夜。単元指導案の修正が終わったのが昨日の夜という有様。毎年、毎年受験生泣かせの日程ではあります。

いよいよ当日。 前回の失敗は繰り返すまいと、あらかじめ路線のルートと時間、最寄り駅から会場までのルートを全て印刷して準備万端で出陣。
……が、どういうわけか最初の電車に乗り遅れ、計画はすべてご破算。
次の電車でそのまま行くと集合時間(厳守)に間に合うかかなり微妙のため、途中で特急(有料)に乗り換えます。
だから余裕を持って行けとあれほど…(以下略)

都立白鴎高校 map.今年の戦場は東京都立白鴎高校

設備に関して言えばさほど目新しさはないものの、冷房が効いているのに驚きました。ここ公立ですよね。 公立学校で冷房が効いているのは校長室と保健室と図書室だけかと思っていましたけど。

会場では30人程度のグループに分けられ控え室に通されました。当然、受験生同士が互いに会話を交わすこともなく、 各自黙々と自作のノートを読み返したり、本を読んでいたり、寝ていたり、ボーっとしたりしています。
結構な人数がいるのに重苦しい空気がそこには澱んでいました。

……おかしい、昨年までとは空気が違う……。

13時15分頃に係員が入出。試験についての注意事項が伝えられます。
ここでさらに細かいグループに分けられ、個人面接の時間、集団活動の時間が発表されます。
私は集団活動の時間が15時10分~16時10分まで、個人面接の時間が16時50分~17時30分となりました。
ちなみに個人面接の16時50分は本日最終組。

とりあえず1時間はこのまま待機。
この間、何人かのグループが集団活動や個人面接のために控え室を出ていきました。
残った受験生は相変わらず誰も言葉を交わすわけでもなく、ただ沈黙を守るのみ。

これはどういうことだろう。
昨年までは自然と集団活動を行うグループの受験生同士で会話がおこり、事前準備(※2)をしていたのに……。

(※2)事前準備……集団活動はグループとしての協調性が見られるため、あらかじめメンバーの状況を知っておくのが得策かと。

結局、誰もしゃべらないので同じグループのメンバーが個人面接から戻ってきたのを機に隣のヤツに話しかけてみた。 するとなんともそっけない返事(※3)。うわーん。共同戦線張ろうぜ。

(※3)そっけない返事……個人面接の直後だったので気が張っているせいかもしれないけど。

向こう隣の受験生がなかなか面白そうな人で、すぐにこちらの話しに乗ってくれた。
聞いてみると今回東京都……というより採用試験自体が初めてという人が多い(※4)ようでした。

(※4)初めてという人が多い……社会人経験の特例が今年から始まったためか。

だからみんな勝手がわからず、だんまりだったのね。
そこで昨年まで自分が経験した集団活動の流れを話して少し意見交換……。

こうして最初の関門、集団活動に望んだのでした。

集団面接(60分)

主な試験の流れはだいたいこんな感じです。

  • 問題(お題)を読み、解答を書く(5分)
  • 各人の解答を発表(1人2分程度)
  • グループで問題を話し合い、解答を一つにまとめる(20分)
  • 質疑応答(20分)

で、今年の問題(お題)はこんな感じ。

公立学校に子供を通わせる保護者は公立学校に何を期待していると思うか。3つ書きなさい。

……うーむ、これは。意外と難しい。
とりあえず5分間しかないので、思いついたことを書きました(あまり考える時間はない)

自分の考えは、
1.基礎学力の習得
2.集団生活におけるルールやマナーを身につけさせる
3.生涯の親友と知り合う手段、方法を見つける
とか、いうようなことを書きました。

それぞれの回答発表後に統一見解を詰めるべく討論を行います。
他の人の回答を聞いたところ、だいたい自分と同じようなことを書いていました。みんな考えることは同じってことか。

普通に考えれば「学力の向上」が統一見解であることは紛れもないと思うのですが、 試験官から「安易に他人の意見に同意しないように」「共通点を統一見解としないように」とクギを刺されていたので、 そうもいきません。

……結果から言えば、討論はグダグダでした。というか20分で統一見解をまとめるには時間が足りなさすぎる。

自分の意見を述べるのは結構ですが、椅子にふんぞり返って話すAさん。態度悪すぎます。……まるで5年前の自分を見ているよう。
基本はこのAさんの意見(←本当に話が長いので要点を掴むのが大変でした)に対して、意見を補足したり反論を述べたりする展開。
そう言う意味では議論が進んで助かりましたが……。
終了3分前になって議論をひっくり返すのは勘弁して下さい。

自分としては、同意すべきところは同意し、譲れない箇所はしっかりと反論したので、それなりに存在感は示せたかと。 ただ、さりげなく統一見解を「基礎学力の習得」に持っていこうとそれとなく誘導したもの制限時間内に議論がまとまりきらなかったので、 ただおしゃべりをしていた感は残念ながらありました。

そして試験官がなんとなくウンザリした表情をしていたのが印象に残りました。 というか、グループとしては完全に失敗だったようです(´・ω・`)

最後の質疑応答は詳細まで覚えていませんが、全員に対して以下の内容を聞かれた気がします。

  • この議論を通して学んだことは何か
  • 保護者が公立学校に「もっとこうなってくれたら良いのに」と願っていることは何だと思うか
  • この議論の中で自分が教員になってから一番大切なことは何か

個人面接(40分)

集団面接が終了してから待つこと30分。いよいよ最終組である自分が呼ばれました。

まず面接室の外で椅子に座り、前の人の面接が終わるのをじっと待ちます。
昨年はこの待ち時間が異常なほど長く感じ、大声で叫んでこの場から逃げ出したくなるような緊張に捕らわれていましたが、 今年は不思議と落ち着いていました。

おそらく昨年の反省を踏まえて面接本を購入し、生徒指導・学習指導の場面指導に関する回答を検討してきたこと。
そして自分のこの面接なんて実は緊張するにも値しないと思えるほど、 数々の修羅場を目の当たりにしている社長のishiiや、お世話になっているコンサルティング会社の人たちのことを思い浮かべていたからかもしれません。

……いよいよ名前を呼ばれ、私の戦いが始まりました。

個人面接の流れとしては以下の感じ。

  • 自己紹介
  • 単元指導案に関する質疑応答
  • 生徒指導、学習指導の具体的指導内容
  • 社会人としての経験の質疑応答
  • まとめ?

自己紹介は昨年、頭の中が真っ白になった例のアレです。

試験官「2分程度で自己紹介をして下さい。場面設定は新学期最初のクラスとします。必要であれば黒板を使っても構いません」

うげ……今年もこれか。
昨年の失敗後、一応対策を立ててはいたのですが、"新学期最初のクラス"という場面設定が気になりました。
とある教育本によれば、新学期最初の3日間は黄金の3日間と呼ばれているようです。

黄金の三日間には、全力をあげて、クラスのしくみを作り、ルールを定め、学習の方法を教え、知的な熱中する授業を体験させねばならない。
全力でだ。おしゃべりをしているヒマなどないのだ。

教育ツーウェイ2004年4月号より

なので自己紹介は1分程度で終わり(特に話すこともないし)、後半は学級として1年間過ごすなかで最低限自分が必ず守る内容を語りました。
やっぱりこれって自己紹介に徹した方が良かったのかな。

単元指導案は作成したものを入室時に試験官に渡すと「また字が小させぇなー」と冗談めかして苦情を言われましたが、 内容については緻密で良くできていると一応誉められました。

そりゃあなた……作成に2年もかかっているのだから。それなりのものはできますよ。

質問で突っ込まれた内容は以下。

  • この単元を選んだ理由
  • この単元の中で一番伝えたいことは何時間目のどこか
  • この単元の中で一番生徒が興味を感じるところはどこか
  • この指導案はどの辺りの学校のレベルを想定しているのか
  • (進学校向けと答えたため)中堅、あるいはそれ以下の学校だったら内容をどう変えるか
  • (授業の最初に日常生活と学ぶ内容を関連づけた話をすると述べたので)作用反作用の授業だったら導入部分は何を話すか?

全ての質問にそつなく答えられました。可もなく不可もなくと言った感じ。
しかし失敗したのがこの後………。

試験官「高校だけでなく中学にも赴任する可能性はありますが、中学では物理以外も教えなければなりません。そこでコケ植物とシダ植物の違いを説明して下さい」

この瞬間、内容をど忘れ。塾のアルバイト(10年ぐらい昔だけど)で散々教えたのに……まさかこの程度の質問が答えられないとは……。無念。
次の質問である"有性生殖と無性生殖では有性生殖の方が有利と言われています。その理由"については答えられた(偶然)。
そして最後の"理科の必須について列挙せよ"は見事撃沈。素直に「申し訳ありません。学習指導要領見直してきます」と答えるしかありませんでした。

すると「この単元指導案は学習指導要領を見て作ったのではないのですか?」と矢継ぎ早に追及の手が……。
この質問には、
"生徒が単元で習得すべき目標の部分は見ました。しかし詳細の内容については各社の教科書、参考書を見ました"
と答えるのが精一杯でした。

実際、学習指導要領には目標のことと単元指導上の注意点ぐらいしか書いていないし。

生徒指導、学習指導の具体的指導内容については

  • 授業中、生徒が突然教室を出て行ってしまいました。あなたはどう対処しますか。
  • ある保護者からは「塾が忙しいので子供の宿題を減らして欲しい」別の保護者からは「勉強させるためにもっと宿題を出して欲しい」と言われました。あなたはどう対処しますか。

学校は即戦力を欲しがっているのだな、ということがよく判る質問をされました。
最初の質問に対して答えたら、試験官から「えっ!?それだけ?」と驚かれ、「はい」と答えると「それじゃぁ、また(教室を)出ていっちゃうな」と笑われました。
即座に「すみません、緊張のあまり肝心なことが抜けていました」と慌ててフォロー。なんとかその場を切り抜けました。

ちなみに答えた内容は、

  • 出て行った生徒についてはチームを組んでいている他の教員に対応してもらう。
  • 自分は出て行った生徒を追いかけない(教室にも他の生徒がいるため)
  • 教室にいる生徒に対してこのことについてどう思うか問いかけて指導の一環とする
  • 授業後に出て行った生徒に「何か不満があるのではないか?」といった感じで事情を聞き出し指導する

といったもの。上から3つ目までを答えた時点で試験官から「えっ!?それだけ?」と笑われ、慌ててフォローした内容が4番目。

二つ目の質問に関しては、それぞれの保護者に事情を説明して理解を求めるといった内容を答えました。 保護者に要望されたからといって宿題を出す量は変えない。というのが基本方針。

……場面指導については正解かどうかは判りません。

社会人としての経験の質疑応答は色々突っ込まれました。

  • 前職場と現職場の仕事内容
  • (新入社員指導について)どのようなことをやり、どう改善されたか
  • 転職した理由
  • 現職場の社長は今回あなたが採用試験を受験することを知っているのか
  • あなたの社会人経験は教育現場で生かせるのか。生かせるとしたら具体的にどの場面か
  • ボランティア経験はあるか
  • ボランティアから何を学んだか
  • 部活指導について

答えた内容は

  • 省略(←専門用語を使わずに具体例を挙げて判りやすい表現に努めた)
  • 積極性や参加意識を持たせるためにただ指示するだけでなく意見を求めた。できたことは小さな事でも積極的に誉めた。 その結果、最初は指示を待つだけだった新入社員が判らないところを積極的に聞きに来るようになった。
  • 前職場の同僚が起業し、手伝いをお願いされたため
  • 前職場の頃から事情を知っている。今回も応援してくれている。
  • 生かせられると思う。特に生徒指導の場面について。
  • 町主催の小学生のためのパソコン教室のアシスタント。
  • 生徒のレベルが様々。教える内容を全て知っている児童にはそれ以上の内容を用意したり、教える側は教える以上の知識や教材が必要であること
  • 中高は卓球をやっていたし、会社に入ってからもテニス、野球、フットサルなど参加しているので運動部は指導できると思う。

最後のまとめ部分は、

  • 生徒理解ということが重要視されているが、合格してから教員になるまで生徒理解に関して学びたい内容は何か
  • 生徒理解をする上で一番大切だと思うことは何か。

答えた内容は、

  • カウンセリング。具体的な実践例を多く知り、その根底にある共通部分を見い出したい(←えらく抽象的)
  • コミュニケーション

これで私の戦いは終わりました。吉と出るか凶と出るかわかりませんが、結果が残念だったときのことを考え来年の自分へ書き置き。

  • 物理以外の教科書(中学レベル_や学習指導要領を読む。
  • 話し方に気を付ける。「~なんとかですよね」といった表現は止める(←時々やっちまった)
  • 話している最中の手振りは止める。基本、手は腿の上。

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