「サーフィン面白いぜ」
友人の誘いに、冗談半分にその気になったら本当にやるハメになってしまった……。
ついに出陣。
絶滅危惧種
サーフボードを担いでいざ水着ギャルが待つハーレムへ海岸へ。道具は何も用意してこなかったが、防水デジカメだけは最優先でバッグに入れてきたのだ。
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水着ギャル絶滅
考えてみれば、「水着ギャル」と聞いたときにビキニ姿の日焼けした若い女性が夏真っ盛りの中、見事なテクで波を乗りこなしている……姿を勝手に妄想大爆発させていただけで、よくよく考えてみれば今日は寒いし、ましてサーフィンという危険なスポーツを肌を露出させてやるわけがない。
だ ま さ れ た。
ギャルとは言わないまでも女性は結構大勢いた。なぜかほとんどコブ付きで、しかも子持ちだったが。
一方海に目を向ければ、波の合間にサーフボードに乗った人が幾重にも繋がっていた。これはかなりの人数だ。Y本曰く、これでも少ない方なのだとか。
エアサーフィン
早速砂浜でY本とS角コーチによるサーフィン講座。ウェットスーツの着方もわからない超初心者にも分かりやすく教えて欲しいものだ。
自分で言うのもアレだが、私はかなりの運動オンチだ。中学・高校と続けてやった卓球は6年間でようやく温泉卓球で勝てるレベル。 会社に入って始めたテニスはコーチをしてくれた課長に初日に匙を投げられた。数年前に始めたスノーボードはこれまで数々の友人、知人を指導し一人前まで導いた名コーチである後輩N地君に教わりながらも挫折。 彼の中では「唯一卒業できなかった生徒」として私の名前が刻まれているほどだ。
レクチャーによると、まず大切なのはサーフボードに腹這いになって乗り、ボードの中心線に体の中心が来るように乗ることだという。 しかもコーチは"腹這の姿勢で顎を引いて上半身を反らせろ"と訳の分からないことを言う。その体勢でどうやって前を見ろというのか。
次に大切なのはパドル(※1)。
(※1)パドル……サーフボードの上に腹這いに乗り、クロールみたいに水を掻いて前進すること。
サーフィンの基本動作はこういうことらしい。
波が来るのを待つ
↓
頃合いの波が来そうになったら浜辺に向かって全力でパドル
↓
波が到達
↓
波が押してくれるので、素早く立ち上がる
↓
波に乗る
……簡単じゃん。
ボードの上でバランスを取るのは、ここ数年(←しかやってない)のスノーボードのキャリアで習得済。パドルも最近始めたプールで慣れて(※2)いる。
(※2)プールで慣れて……コーチ曰く、パドルと水泳のクロールは違うらしい。
なので、立ち上がることさえできればサーフィンなんて楽勝。華麗に波に乗ってビーチのギャルを失神させて5人ぐらいお持ち帰り。まさにハーレムだぜ、うははははは。
……などと夢見ていた時代があった。
まずは砂浜にサーフボードの図を書いて、その上に腹這いになってパドルの練習。そして素早く立ち上がる練習。理論はとてもよく判ります、ええ。
「じゃぁ、さっそく行きますか」
まだ2~3回ぐらいしか練習していないのに、いきなり実践投入。要は体で覚えろということか。
そしていよいよ恐怖の入水。なぜ"恐怖"かお忘れの方もいるかもしれないが、実は足の親指の爪が全部剥がれているのだ。目下急速組織再生中。恐る恐る海水に足を浸ける……。
「ぎゃぁあああああああぁっぁぁああああぁあぁあぁあ!!!!」
酸の海ばりの激痛が全身を駆けめぐ……ということはなく、幸いにも傷口が治りつつあることに安堵した。しかし水中で歩くたびにリーシュコード(※3)がペチペチと傷口にあたり、そのたびに痛みを感じた。
(※3)リーシュコード……サーフボードが流れていかないように足とボードを結びつける留め具。数メートルある。
最初にY本が見本を見せてくれた。波が来るのを見切るや否や素早くボードに乗り込み、華麗に波を切り、サーフボードを操る。端から見ると確かに上手い。
ちなみにそこに到達するまで約2年。気が遠くなりそうだ。
「さっそくボードに乗ってみて」
Y本コーチの指示に従ってサーフボードの上に乗った……つもりが、これが全然乗れない。乗った瞬間に濁流に翻弄される木の葉のようにボードは右へ左へゆらゆら揺れて一向に安定しない。
悪戦苦闘している私の事情など波は少しも理解してはくれるわけもなく。必死になってボードにしがみついている私に容赦なく大波が……。
……たちまち海中に転落して、しかも大量に塩水を飲んだ。
それを見てS角コーチ大爆笑。悪かったな。
見事に出鼻を挫かれ、今後のことを考えると私は激しく不安になるのだった。
(つづく)
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