それにしても人の世とはなんて狭いのだろう。
そして人はどこで繋がっているかわからないものです。
今日ほどその想いを強くしたことはありません。
普通に考えても滅多にあり得ないことのように思えますが、ウチの副社長が職場の有志を自宅に招待して「月を見る会」を開いてくれるのだとか。
大学時代は天文学を志していた私。
幹事からのお誘いに真っ先に手を挙げたのは言うまでもありませんでした。
月を見る会
月を見る会……とは言うものの、普通"月見"と言えば"酒"。
今日の十三夜に引っかけた ただの宴会だろうと大抵の人は考える。
ところがだ。
ウチの副社長の父上(既に他界)は著名な天文学者であり、自宅には備え付けの望遠鏡があるのだという。
こんな人もその辺にはいそうもありませんが、"月を見る会"と言ったら本当に月を観測するところが今回のミソ。
とはいうものの職場の人間全員が観測好きなわけもなく8割はやっぱり宴会。
世間知らず
この業界に転進してからまだ半年。
まだまだ判らないことだらけ。
その中の一つが人付き合い。単純に自分に常識がないだけとも言う。
以前もらった幹事からの案内状に、
「尚、自分で飲みたいもの、食べたいものはご持参下さい。」
とあったので、適当にスーパーでお菓子や酒でも買って持って行けばいいか。など、いつものノリで考えていました。
しかし遅刻しそうになり、足りなくなったら近所のスーパーに買い出しへ行くかぐらいの勢いで無礼にも手ぶらで参上。
そうしたら他の方々が持ち寄った"飲みたいもの、食べたいもの"が、富山の名酒だとか、熊本の馬刺しだとか、超有名店のロールケーキだの高級物産品の百貨店状態。
……"自分で飲みたいもの、食べたいもの"とはこういうことを指すのか。
「おっ、これは美味い。これは誰が持ってきたんですか?」
このような会話が繰り広げられる度に、ただ一人恥ずかしくて小さくなっていました。
言い訳させてもらえば、恐れ多くも副社長宅にお邪魔するのに手ぶらでは失礼ぐらいの考えはありました。
となると恥ずかしくない地元名産の落花生を買ってお土産に持参しようと考えていたのも確か。
しかし部活・引率・実験指導で地元に帰るヒマがなかったんだYO!
……というか他の方々がいつの間にそのようなブツを仕入れていたのか不思議でならぬ。
えらい恥をかいた。
次は(あるかどうか判らないけど)小田原名産かまぼこ で捲土重来!
先生との不思議な縁
"縁"などと言うものは、自分の思い込み次第でいくらでも量産できるものです。
今回の縁も思い込みでしょうか。
かつて大学時代に国立天文台の磯部研究室で4年間学び、先生にお世話になった話は何度か触れました。
今の職業への想いを強くしたのも磯部先生から教わったことを実践したいと考えたからでした。
しかし試験に合格できないまま、報告する前に先生は他界されてしまいました(→恩師の死)
それからようやく今の世界に転職が叶い、たくさんの中から今の職場へ。
そして職場の副社長の父親が天文学者。まったくの偶然。
聞けば副社長も若い頃は国立天文台によく遊びに行ったのだとか。
かつて副社長に「磯部先生をご存じですか」と聞けば「むこうは覚えていないだろうが、何度か会ったことがある」とのこと。
今日、副社長宅の本棚に一冊だけ磯部先生の著書があった。中身をパラパラめくってみた。裏表紙には"若(なんとか)記念 ○○○○君"(←副社長の名前)と磯部先生のサインが書かれていた。
サインを見た瞬間、かつての自分を思い出して胸がいっぱいになった。
いや、たぶん柄にもなく酒を飲んでしまったせいだろう。そうに違いない。
念願叶って今の道に進むことが出来たが果たして先生の教えは実践できているのだろうか。
"まだまだ"だと先生が叱咤激励をしていてくれているように思いました。
月を見る
望遠鏡といっても一般家庭に置いてあるようなミニ望遠鏡とはレベルが違う。
電動開閉式ドーム付き自動追尾光学望遠鏡。
副社長曰く「退職金を全部注ぎ込んだ」ぐらいの金額らしい。
退職されてなお天体観測に賭ける情熱に頭が下がります。
この望遠鏡を使えば木星の縞模様も観測可能。
また肉眼では観測不可能な木星の衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト……のうち3つ)もはっきり映っていた。
デジカメで撮影してもらったものの……微妙。
写真右下にゴミみたいに写っているのが衛星の1つ。
宴会中は曇り空にて名月も雲に隠れてしまいなかなか観測できなかったものの、夜10時頃には雲が一気に晴れました。
この写真はなんとか月っぽく見えそう。
これは満月すぎて全然ダメでした。
デジカメの性能がかなりショボイのでほとんど撮影できませんでした。。
しかしレンズを通して直接観測した月は大気がゆらゆら揺れている奥で、クレーターだらけの姿をはっきり見せてくれました。
今年はガリレオが初めて望遠鏡を作ってから400年。世界天文年。
はじめて手製の望遠鏡で月を見たガリレオは、その姿にさぞ感想しただろう。
名月を見ながらそんなことを考えていました。
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