「学校」というある種、世間から切り離されたような印象を受ける場所においても社会を構成しているものの一部であることに違いはありません。
早い話が一部の人にとっては「学校」だろう「企業」だろうが容赦なく営業の電話がかかってきます。
もちろん一般企業と営業内容は異なりますが……。
まだ新人ゆえか、いまだ私ご指名で来たことはないのですが、資産運用の営業にブチ切れている副社長の姿などをたまに見たりします。
感触として一番多い営業は、やはり教材の売り込み。
「音楽担当の先生はおられますか?」
というように掛かってきます。
自分もこの業界に入るまでは信じられなかったのだが、教員というのは想像以上に忙しい。とにかく訳も判らず忙しい。
そのため生徒が下校するまでは職員室にいることは滅多にない。
「あいにく席を外しておりまして……」
とはお断りのセリフによく使うが、本当に不在の場合が多い。「ご用件を…」と聞くと、たいてい「いえ、挨拶だけですので」と引き下がってくれる。
一般企業と比べてアポ率は相当低いのではないだろうか。そもそも担当者がつかまらないのだから。
このように9割ほどはあっさり引き下がってくれる。
しかし……。教育関連では最大手の"ベ"。ここは相当しつこい。
思い返してみれば4月の下旬だったか、社長宛に「理科授業に関する調査願い」なるものが届き、担当に回ってきた。
中は各学校でどのように理科授業を進めているのかアンケートに答えて返信しろ、という内容。
国か教育委員会の調査かと思いきや、差出人は"べ"。
(なんで一企業の調査に協力しなければならないのか……)
という思いもあり、アンケートはそのままゴミ箱に直行。
またエコに反してしまったと独りごち、記憶から抹消していたところ6月の上旬から電話がかかってくるようになった。
「先日、校長先生宛に"理科授業に関する調査"をお送りさせて頂いたのですが、理科教科主任のN先生はおられますか」
これが先方の口上。
不在だろうがその場にいようが「席を外している」と断ると、「では何時ならいるのか?」とくる。
「知るか」と答えると「明日かけ直す」とその場は引き下がるが、翌日本当にかけ直してくる。
ある時など昼休み(※1)に電話してきて、本当に不在だったので「席を外している」と答えれば「今日は何時なら空いているのだ?」と、ここまではいつも通り。
いつも通り「知るか」と答えると「16時ならいるか?」と聞いてきたので「確実なことは言えないが、いるんじゃね?」と適当に答えたら、本当に16時に電話してきた。
(※1)昼休み……さすが教育関連最大手。よく時間をご存じでw
あまりのしつこさにさすがに腹が立った。
そんな一企業の利益になぜ学校が協力しなければならないのか。訳が判らぬ。
電話がかかってきた。
「先日、社長宛に"理科授業に関する調査"を……」
きた。
これまたいつも通りのやり取りを終えた後で、出方を変えてみた。
自 「教科主任に伝えておきたいのだが、用件は?」
ベ 「さっきも言ったろ。社長宛に送った調査だよ」
ここからだ。
態度は慇懃に、中身は無礼に。
私 「一つお伺いしたのですが……」
ベ 「なんでしょうか」
私 「その調査にお答えすることで、我々にどんなメリットがあるのでしょうか?」
ベ 「メリットと申されますと……金品とか謝礼に関することでしょうか?」
公務員が謝礼とか受け取れるわけないだろうが!
お前のところの頭の中には札束しか飛んでないのか。
私 「いいえ、そうではなくて。その調査にお答えすることで、私たちが理科の授業を進める上でどのようなメリットがあるのか教えて頂きたいのです」
ベ 「……ええと。秋頃に各学校に今回の調査結果をお送りすることになっております」
私 「で?その各校の授業の進め方の結果が、我が校の2学期以降の理科授業に直接どう生かせるのか、ということをお聞きしたいのです」
ベ 「……調査結果が授業に直接関係があるかと言えば、なんとも申し上げられません」
私 「ですよねぇ。つまり我々にはメリットがない調査について回答しろというわけですか」
ベ 「…………………」
私 「一つお断りしておきたいのですが、我々にとってメリットがあるならまだしも、メリットもないのに"ベ"さんのような一民間企業の調査にお答えするのは、正直どうかと思います。
一応教科主任にはお伝えしておきますが、お答えできかねることがあることをご承知おき下さい」
あれから電話はかかってこなくなった。
ブラックリストに載ったかな?
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